私たちの存在の源に繋がる 寂静への導き
ヴェーダーンタ学派
ブラフマンは言葉で表すことはできませんが、聖音オームがその象徴とされ、始めも終わりもなく、変化せず永久に存在し、我々個人の存在の奥にあるアートマン(自己の魂)はその最高我であるブラフマンと究極的には全く同一のものとします。
このブラフマンとアートマンこそが宇宙における唯一の「有(サット=真実)」であり、これに対立する第二のものはないとし、「不二一元論」、「アドヴァイタ・ヴェーダーンタ」とも呼ばれます。
この絶対的真実であるブラフマンとアートマンを知るまでは、無明の中で非真実たる幻、マーヤーに惑わされ、輪廻を繰り返すという思想をもちます。
ヴェーダーンタ学派の中で最も有力で、かつ有名なのはシャンカラの学問系統。しばしば過去のインドにおける最大の哲学者と称されます。
ヨーガ学派
プラクリティは転変(evolution)を繰り返し、複雑な世界観を作り上げ、時に心を混乱させ、心もまたプラクリティから生じたもので、心の制御の訓練無しには、新たなカルマを生み出していくきます。
これら現象世界で起こる苦楽を含めた経験をプルシャに体験させ、執着しているものを完全に放棄することで新たなカルマが生じることを滅し、プラクリティは元の定位置に静かに収束してゆく。この過程を逆転変(involution)と呼ぶ。プラクリティの存在理由は、最終的に自分はプルシャであることを悟らせるためです。
サーンキャ学派と同じく根本思想は二元論とし、ヨーガ修行を通してサマーディ(三昧)に導く点で、ヨーガ学派は実践的な学派です。
この哲学思想と心の訓練のために教示された代表的論書が、パタンジャリ編纂の「ヨーガスートラ」です。「ヨーガとは心の働きを止滅することである」から始まり、具体的なヨーガ修行と心得を8階梯で示しています。この8階梯の修行法を”アシュターンガ・ヨーガ”、”ラージャ・ヨーガ”と呼びます。
インドの言葉で「ダルシャン(ダルシャナ)」とは"尊いものを見る”、”拝む"、"思索"、”哲学”を意味し、「ヨーガ・ダルシャン」と言えば「ヨーガ・スートラ経典」のことを指します。
❋人間の中に存在する三つのグナの異なる比率
サットヴァ グナ (善性 建設的 調和 温和)ラジャス グナ (動性 混乱 癇癪 激情)
タマス グナ(鈍性 破壊的 否定的 混沌 無秩序 無知 邪悪 暗闇)
すべての人はこの3つのグナの性質を持ち合わせています。この比率によって、心の状態、正しい思考と選択、人間関係が変わります。サットヴァの傾向が強くなるほど、素晴らしい師にめぐり合い、ヨーガの成就に向けて良いスタートを切ることができるでしょう。日々心の訓練と研鑽、バクティヨーガ、菜食中心の食生活によってもサットヴァ性を高めることができます。
❋チッタとよばれる心の中で起こる様々な過程
チッタの中の思いの波のことをヴリッティとよびます。心は常に一点に定まらず、転変・変化し続ける性質がヴリッティです。
このヴリッティを止滅(ニローダ)することがヨーガの目的とするところです。
ヴリッティは以下の5つに分類されます。
①プラマーナ(प्रमाण )(証明 証拠 正しい知識)
プラティヤクシャ プラマーナ(प्रत्यक्ष -प्रमाण )
(直接経験による知識、瞑想で体験した知識。私たちが見、感じるものは何でもプラティヤクシャ プラマーナ。)
アヌマーナ プラマーナ(अनुमान -प्रमाण )
(分析、予想、推論による知識 ジュニャーナヨーガ)
アーガマ プラマーナ(आगम -प्रमाण )
(ヴェーダ、仏典などの聖典、偉大な人物の言葉から得た知識)
②ヴィパルヤヤ(विपर्यय)(誤謬、誤った知識)
例:暗闇で縄を見て蛇だと思う。真珠の母貝の一片を銀の一片と思う。
③ヴィカルパ(विकल्प )(真実性を持たない言葉、イマジネーション)
④ニドラー(निद्रा)(眠り、無知的な暗闇の瞑想)
⑤スムリティ(स्मृति)(記憶 念)
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